今全国の自転車屋はネット通販で購入された自転車の取り扱いに悩んでいると思います。
ウチみたいな暇な店(!)でも何度かそんな自転車のお持ち込みがありました。
はじめは何度も来てくださったお客さんが、彼の部下を連れてご来店。「彼、ネットでロードバイクを買ったんですけど、不安なんでみてやってくれますか?」確かに不安です。
「この自転車、いくらだったんですか?」と聞くと、「3万8千円でした」とのこと。常識的に見てもこの値段のロードバイクがまともなはずはありません。しかも彼の身長は約160センチですが、彼が購入した自転車のトップチューブは56センチという長さでした。この大きさだと、適正身長はだいたい180センチというところでしょうか?
安い自転車にありがちな思いボスフリー仕様の7速で、ドライブトレインも聞いたことのないメーカーが付いています。そしてなにより重たい。計ってみるとおよそ20キロ。これ、ママチャリより思いじゃん!
小さな自転車をステム交換して大きなひとになんとか合わせることは出来ますが、大きな自転車を小さなひとに合わせることはできません。彼がこの先もっと大きくなってくれれば別ですが。
購入サイトには、適正身長として160センチから180センチとなっていたそうです。…ありえませんね。しかもハンドル周りのビスはゆるゆるで、サドルは手で回ってしまうという状態
長い目で見るとネットで安く自転車を買うよりも、地元の自転車屋で買う方が何倍も得することは明白なんですが、まあ自分のことを振り返ってみてもネット通販は安くて便利だし、かなりお世話になってるのは確かで、ネット通販というビジネススキームだけを責めるのも問題があるかなとは思いますが「ネットで買ってはいけないモノ」があるのも確かでしょう。
完全に組まれて納品された自転車でも、運送中にネジが緩むことはあります。ハンドルが曲がってたり、ブレーキの取り付け位置がズレて片効きになったり、ブレーキワイヤーの取り付けが緩んだり。
「剥き身」で乗ってときには時速50キロを超えるような乗り物の大切な部分を購入者自身がいじるって、かなり怖いことじゃありませんか?
実質ネット通販の自転車は7分組という状態で納品されることが多いので、受け取ってから自分でシートポストを付けたり、ハンドルを固定、調整したり、前輪を嵌めたりしなきゃなりません。本当は専用の工具を使って確認、増し締めして頂きたい部分もかなりあります。
7分組の自転車を自転車屋に持ち込み、完成させてもらう工賃は1万5千円円から3万円だそうです。結構良いお値段ですが、それでも自転車屋によっては断るところもある。それはつまり個人経営の零細企業にとってリスクがあまりに大きいから。最後に組み立てた自転車屋にとって万が一のことがあった場合を考えると、責任を追及されるよりはお断るする。よくわかります、超零細自転車屋としては。
ウチとしてはそんな注文にもお応えしたいし、現金収入は魅力的です。でも誓約書を書いていただいてネット通販の自転車を組み立てる、それって果たしていかがなものか? 今すごく悩んでおります。
と書いた後にまた一台持ち込まれました。これは高校生でやはりネットでロードバイクを買ったそうです。
…この自転車もものすごくデカかった。
http://sage-bicycles.com